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体罰が届く場所は、一番大切な場所だった
友田先生の研究チームは、厳しい体罰を受けて育った人の脳を調べました。 その結果、ある特定の部位に変化が見られたのです。 それが、前頭前野 と呼ばれるエリアです。 前頭前野は、脳の司令塔 とも呼ばれるとても大切な場所で、- 物事を考える
- 感情をコントロールする
- 我慢する
- 正しい判断をする
- 将来を見通して行動する
「その場で言うことを聞かせる」の落とし穴
体罰は、たしかにその場では効きます。 痛い、怖いと感じれば、子どもは一時的におとなしくなります。 だから親は、 「効いた!」 と錯覚してしまうのです。 でも、それは本当に効いているのではなく、恐怖で動いている だけ。 恐怖で動く脳と、自分で考えて動く脳は、まったく別物です。 そして困ったことに、恐怖で動く経験を重ねれば重ねるほど、考える力は育たなくなっていくのです。 その場では言うことを聞くのに、- 自分で判断できない
- 言われないと動けない
- 失敗を過剰に恐れる
- 人の顔色ばかりうかがう
私たち親世代の当たり前を疑う
「自分も叩かれて育ったけど、ちゃんと育った」 そう感じる方も多いと思います。 私もそう思っていました。 でも、それは 「叩かれても、なんとか育つことができた」 ということであって、 「叩かれたから、ちゃんと育った」 ではないはずなのです。 むしろ、私たちは大人になってからも、- 怒られることが怖い
- 失敗を隠したくなる
- 人の評価に過剰に反応する
コーチの現場から
高校野球のメンタルコーチとして現場に入ったとき、最初に驚いたのは、一部の指導者がまだ体罰を「指導の一環」と考えていたことでした。 「厳しくしないと強くならない」 「優しくするとダラシなくなる」 しかし、実際にチームのメンタルを見ていくと、体罰を受けた選手ほど「指示待ち」になったり、ミスを隠すなどの弊害が出ることも多いのです。 自分で考えてプレーできない。 ミスを極端に恐れる。 萎縮して、練習では打てるのに試合で打てない。 これは子育てでもまったく同じ構図です。 体罰で「言うことを聞く子」は育つかもしれません。 でも、「自分で考えて動ける子」は育ちません。 脳科学が示しているのは、まさにこのことです。ゴールは「言うことを聞かせる」ではない
以前、このブログの「叱る?叱らない?」の記事でも書いたのですが、 子育ての本当のゴールは、「言うことを聞かせる」ことではないと私は考えています。 本当のゴールは、 子どもが自分で考え、自分で判断し、自分で行動できるようになること。 そのためには、前頭前野が健やかに育つことが欠かせません。 そして前頭前野は、怒鳴られたり叩かれたりする環境では育ちにくい のです。 逆に言えば、- 言葉で丁寧に伝える環境
- 子どもの気持ちを聞いてもらえる環境
- 失敗しても大丈夫だと感じられる環境
「叩かない」は、あなたの子どもへの最大の贈り物
体罰をやめる。 たったそれだけのことですが、これは子どもの脳に贈れる最大級のプレゼントだと、私は本気で思っています。 もしも今、 「叩いてしまうことがある」 「手が出てしまう自分を止められない」 そう感じている親御さんがいたら、どうか自分を責めないでください。 それは、あなたが 弱いから ではなく、余裕がないから です。 疲れきっている親に、冷静な判断なんてできません。 だから本当に必要なのは、叩かないための意志の力 ではなく、 親自身の余裕を取り戻すこと なのです。 この話は、連載の後半でゆっくり掘り下げていきます。 今日の一歩は、ただひとつ。 「体罰は、しつけの道具にはならない」 このことを、心の片隅にそっと置いておいてください。 気づいた人から、変えていけばいい。 それで十分なのです。 『幸せな秀才児』が増えることが最大の喜びです。📚 この連載について
この記事は、小児神経科学者・友田明美先生の研究をもとにした「脳科学で読み解く子育て」連載の一部です。→ 連載の全記事一覧・概要を見る