子どもたちがどのように学ぶかは、彼らの未来の形成に大きな影響を与えます。
イタリアから生まれたレッジョ・エミリア教育法は、子どもの自主性と創造性を奮い立たせる画期的な方法として注目を浴びており、最近ではテクノロジー大手のGoogleまでがその方法論に関心を示しています。
今回は、このレッジョ・エミリア教育についてお伝えしていきます。
目次
レッジョ・エミリア教育の基本理念
起源と歴史的背景
レッジョ・エミリアアプローチ(教育)は、イタリアのレッジョ・エミリアという都市で発祥した教育法です。
第二次世界大戦後、復興の中で新しい教育を求める声が高まっていました。その中で、このアプローチはロレンザ・マリオット教育者らの手によって形成されました。
このアプローチが生まれた背景には、戦争の悲惨さを乗り越え、子供たちに新しい未来を築く手助けをしたいという強い願いがあり、子供たち自身が主体となって学ぶことの重要性を認識し、それを基盤としてこの教育法が開発されました。
教育の特徴
レッジョ・エミリアアプローチの最も顕著な特徴は、子供たちの自主性を尊重することです。
以下は、このアプローチの主な教育の特徴です。
- 子供中心の学び
子供たちの興味や関心を中心に据え、彼らが自ら問題を発見し、それを解決する過程を大切にします。 - 環境は第三の教育者
教室の環境や設備は学びの一部と考えられ、それを通じて子供たちの学びが促進されます。 - ドキュメンテーション
子供たちの活動や作品、言葉などを記録し、それを振り返ることで学びの過程や成果を共有します。 - 協働学び
子供同士、また教育者と子供との間での対話や協力を重視し、共同での学びを奨励します。
このように、レッジョ・エミリアアプローチは子供たちの成長を最大限に引き出すための独自の方法を持っており、世界中の多くの教育機関で取り入れられています。
子供たちの「百の言語」
子供は 百の言語を持って生まれる
百の手、百の考え、百の方法で 世界を考え、考える、遊ぶ、話す。
百の言語で リスニング、驚く、愛する 百の楽しみのため 歌い、理解し、見つける。
しかし、盗まれる
学校と文化によって
彼らの90の言語
そして彼らに言う
考えることの方法を発見する
そして愛し、理解する
世界は一つの方法、または10の方法しかない
これは、レッジョ・エミリアの創始者であるロレンザ・マリオット(Loris Malaguzzi)による「百の言語の詩」の一節です。
この詩は、子どもたちが持っている無数の表現方法やその潜在能力を称賛し、伝統的な教育システムがこれを制限することの矛盾を指摘しています。
「子供たちは百の言語を持っている」という考え方は、文字通りの言語だけでなく、絵を描くこと、歌を歌うこと、身体を動かすことなど、さまざまな表現の方法を意味しており、これにより、子供たちは自分の考えや気持ちを自由に表現することを尊重しなければいけないとしています。
「百の言語」とは、レッジョ・エミリア教育の中心的な理念の一つであり、この言葉は、子どもたちが世界を理解し、自分たちの感じることや考えることを表現するための無数の方法や手段を持っているという考えを示しています。
百の言語の背景
レッジョ・エミリアのアプローチは、子どもたちが生まれながらにして持っている無限の可能性や潜在能力を信じるものです。
このアプローチは、伝統的な教育方法においては無視されがちな子どもの声や表現を重視します。
「百の言語」の理念は、子どもたちの持つ無限の可能性と表現の豊かさを認識し、尊重するものです。
子どもたちは言葉だけでなく、絵や彫刻、音楽、ダンスなど、さまざまな方法で感じたことや考えていることを伝えることもとても重要だということを忘れてはいけないのです。
レッジョ・エミリアアプローチは、世界中で高く評価されており、最近では、アメリカのGoogle社にある保育施設でも取り入れるなど、多くの国でこの方法が導入されています。
特に、子供たちの創造性や思考力を伸ばす手法として注目されています。
多くの研究が、このアプローチを採用した学校や施設での子供たちの高い自主性、問題解決能力、社会性を示しています。さらに、自分の考えを表現する能力や他者と協力する姿勢も育まれることが報告されています。
発達心理学の権威であるジャン・ピアジェの言葉に、「子供は小さな研究者である」というものがあるように、近年の脳科学の研究でも、子どもの興味や好奇心を刺激することが、脳の発達に良い影響をもたらすことが分かっています。
興味を持ったことに対する深い探求は、情報の吸収や理解を加速させるとされています。
レッジョ・エミリアアプローチの実践
教育者の役割
レッジョ・エミリアアプローチにおいて、教育者は従来の「教える者」という立場ではなく、子供たちの学びのパートナーとしての役割を果たします。
彼らは子供たちの興味や疑問を深く掘り下げ、一緒に学ぶプロセスをサポートします。
教育者は常に反省と自己評価を繰り返し、子供たちの学びの質を高めるための方法を追求します。
親との関わり
このアプローチは、家庭と学校の緊密な連携を強調しています。
親は子供たちの学びの重要なパートナーであり、学校の活動やプロジェクトにも積極的に関与することが奨励されます。
環境としての“第三の教師”
学習の舞台
レッジョ・エミリアアプローチにおいて、教室や学習環境は「第三の教師」として位置づけられます。
これは物理的な環境が子供たちの学びや感じること、考えることに大きな影響を持つという考えに基づいています。
環境は、子供たちが探求し、体験し、創造する場所としてデザインされています。
資料やリソースの配置
探求の道具としての資料やリソースは、子供たちが自由にアクセスできる場所に配置されています。これにより、子供たちが自分の興味や好奇心を追求する際の障壁が取り除かれます。
学びの記録
教育者は子供たちの活動やプロジェクトを詳細にドキュメント化します。これは、子供たちの学びや成長の過程を振り返るためのものであり、また、その成果を共有し、次のステップや方向性を考えるための手段として用いられます。
コミュニティとの共有
ドキュメンテーションは、学校や施設のコミュニティ全体とのコミュニケーションの一環としても利用されます。親や他の関係者と子供たちの学びや成果を共有することで、一体感や連携の強化が図られます。
共同作業の魔法
子供たちが自然に共同作業をする様子は、そのままにしておくだけでも美しいものです。
しかし、レッジョ・エミリア教育では、この共同作業をさらに高め、深化させるための環境や機会を意図的に提供することが特徴です。
1. 共同作業の重要性
共同作業は、子供たちが自らのアイディアや感じたことを共有し合う基盤を作り出します。
彼らは、他者と意見やアイディアを交換することで、異なる視点や考え方を受け入れる能力を養います。
これは、彼らが未来の社会において多様性を受け入れる基礎となる要素です。
2. 社会的スキルの発展
共同作業を通じて、子供たちは相手の感情や意図を理解し、共感する能力を養います。
これは、友情を深めたり、コンフリクトを解決する能力としての基盤を築く要素となります。
3. コミュニケーション能力の向上
レッジョ・エミリア教育では、子供たちが話すだけでなく、聞く能力も養います。
共同作業をする中で、相手の言葉をしっかりと受け止め、それに対して自分の意見や感じたことを適切に伝える力が身につきます。
4. 具体的な事例
イタリアのレッジョ・エミリアの学校では、子供たちが集まって大きな絵を描く活動が行われたことがあります。
最初はそれぞれが自分の好きな絵を描き始めましたが、次第に一人の子供のアイディアが別の子供のアイディアと結びつき、一枚の大きな作品が完成しました。
この過程で、子供たちはどのようにして協力し、アイディアを合わせていくのかを学びました。
レッジョ・エミリア教育の中での共同作業は、単に「遊び」や「活動」を共にするだけではありません。
それは、子供たちが共に学び、共に成長するための基盤を築く重要な要素となっています。
このアプローチを取り入れることで、子供たちは社会の中での自分の役割や、他者との関わり方をより深く理解することができます。
まとめ
発達理論で有名なレヴィ・ヴィゴツキーの「社会的学習理論」などの研究からも、レッジョ・エミリア教育の効果が示されているように、
子供たちの自発的な学びや興味を中心にした教育は、彼らの能力を最大限に引き出すことができます。
レッジョ・エミリア教育は、子供たちの持つ無限の可能性を信じ、それを最大限に引き出す方法として、多くの親や教育者から注目されています。
日本でも、この新しい視点やアプローチを取り入れることで、子供たちの成長をより豊かにする教育が増えていくことを願っています
幸せな秀才児が増えることが最大の喜びです
シェアして頂けたら嬉しいです
それではまた